回顧録。七つの星に変わる。

“忘れることが怖いから 少しずつ話をしよう”

「追っかけ」はじめたよ。2016年

WUGの3rdライブは素晴らしかった。

空調が効き、小さめながらよく見える会場。
クオリティの高い生歌。
精緻なフォーメーションダンス。
ゆかいなメンバーたち。

“キャラクターの力”を借りずに、ここまでの魅力が出せる子たちだとは……。

仙台サンプラザでの昼公演が終わった後に友人と約束があった私は、そのままグッズ※をたくさん買って友人宅に持ち込み、いやー良かったのよ!と自慢した。

……あまり興味を持ってくれなかったが、それでも前のめりにガツガツ語った程度に私はのめり込んでいたのだ。



(※服系以外は普通にその時間でも買えた。それもアイマスとの一つのカルチャーショックである)

ーー

私がそれまで見てきた「キャラクターのライブ」とWUGのライブは、少しだけ違うと思う。

「キャラクターのライブ」は声優をイタコのようにキャラクターの“化身”に見立て、重ねて見るもの。
声優……つまりある種の役者として舞台に立ち、キャラクターのステージを演じるものだ。

対するWUGのライブは、7人の少女たちが“キャラクター”を演じる時間を設けていない。
彼女たちこそがアイドル“WakeUpGirls!”そのものであり、殊更アニメキャラクターを演じなくてもアニメとリアルは自然と“重なって”見えるからだろう。

ーー

やがて東京千秋楽の日、情報を眺めていると……

東北イオンコラボ。
三幸製菓コラボ。
アニメタイアップ。

本当にびっくりした。
え、WUGってそんなことやるの!?

ーー例えば、以前からあったイーグルスコラボは地元の人間ならさほど驚かないはずだ。
あの球団は地元の面白いネタを見つける嗅覚が鋭い。ーー

だが、誰もが利用する有名企業(の東北支社)とのコラボは度肝を抜かれたし、名目上はアニメ中の存在であるWUGが、まさか他アニメに音楽を提供するとは思わなかった。

今にしても、この時ほどWUGにびっくりしたことはこの先何年もない。
もっとも、何故この時それほど驚いたかという点には、WUGはこんなもんだ、B級だ、という侮りやバイアスが根底にあったことは事実であるが……。



さて、次のライブは幕張メッセか。

年末のフェスって長いのかな……?
連休とれないし日帰りしかないか。
終電なくなるんじゃないの?

……でも行く。
じゃ、車だ。

(この頃にはご覧の有り様で、もう関東くらいなら後先気にせず遠征するようになっている。)

SUPERLIVE。

『新章』が予告された衝撃の公演。

正直イベントホールの音割れは酷いし、演者さんは見えないし、思ったよりぜんぜん短くて、満足ばかりのライブではなかったが……

それでも、あのライブに参加したことで、私はさらにWUGが好きになっていた。
なぜなら。

『WUGpedia』をご存知だろうか。
少しばかり古い『WUG』の資料集だ。

とても貴重なインタビューや解説、細やかな設定など、『WUG』TVシリーズまでの全てが掲載された網羅的な資料なのだが、この書籍にはある印象的な文言が書かれている。

“「2期決定」以外のことはだいたい書いてあります。”

そう、誰もがTVアニメの続編だけは絶対にないと思ってしまっていた。

だからこそ、『新章』決定に対する想いや期待というのはひとしおで。
彼女たちが少しだけ報われた気がして。
アニメに見劣りしない、現実としてそこにある“物語”を噛み締めて、私は帰路につくのだった。