回顧録。七つの星に変わる。

“忘れることが怖いから 少しずつ話をしよう”

大切なお知らせ。

あのワグナイターの絶頂から一日。

仕事中に少しだけ休憩をとり、携帯メールを開くと、そこには少しだけおかしなメールが届いていた。

送り元は“わぐらぶ”。
大切な、大切なお知らせだった。

ーー

うわ、この時が来ちゃったか。
うーん、あっけない。これからだと思ったのにな。
なんで今なんだろ。

うわ、あちこちでニュースになってる。
みんな、意外と関心持ってくれてるんだ。
惜しんでくれる人、こんなにいるんだね。

新作作ったのに、あれっきりで最後か。
妹ちゃんたちはどうするのかな。
7人はいつまで経っても、ひとりひとりで活躍しても、きっと7人のままだと思ってたのにな。

そっか、バラバラになっちゃうんだ。
来年には、見られなくなるんだ。

……なるんだ。

ーー

ゆっくりと時間をかけながら、私の思考や心を“解散”が蝕んでいった。
闇も悲しみも想いも、私が抱えた大きさなどちっぽけなものだ。
でも、とにかく残念で、寂しかった。虚しかった。

なんか、心から空気が抜けてくみたいだな。

そんな、感覚。

お祭り。2018年②

ーー

きっと、彼女たちがもっとも不思議な色で輝いていた時期の話。

ーー

隙間だらけの幕張イベントホール。
ガチ走りするわぐちゃんとランガちゃん。

今までのどのWUGイベントとも毛色の違う、ファン感謝祭のような独特のイベントだった。

5月12日、GreenLeavesFesのことだ。

狙ったかのようなセットリストは、さすが歴戦のわぐなーさん達。
心から楽しそうに輝き飛び回る10人の姿は、一回りも二回りも小さなホールで必死に踊っていた姿と何も変わらない。
ホールはだだっ広くても、会場選びがおかしくても、彼女たちは不貞腐れたりしない。
会場は10人の喜びと、多くの人々の幸せで一杯だったから。


青葉の軌跡。

東京の都心にあるホールで演じられた、WakeUpGirls!がやっと7人になれたあの頃の物語。

みなまで語るべきではないだろう。

この物語を再現する彼女たちはどこか晴れやかで、新鮮な驚きを見せてくれた。
『記録』の物語が、舞台の上で続いてくれた喜びもある。

“諦めない”。

そんな言葉が持つのは、計り知れない力だった。


ワグナイター。

私がWUGに触れ始めたきっかけのイベント。
WUGのローカル的な側面を象徴する、恒例のお祭り。
私は毎年、これだけは絶対に来い!!と、誰に言うでもなく呟いてきた。
この年はまさかの2daysだ。

前夜祭。

阿部ちゃんのトークにひとしきり笑った。
ランガちゃんを初めて至近距離で見た。
はやまるが選手たちの女装で興奮していた。
厚木那奈美さんがおおはしゃぎでとび跳ねていた。
森嶋優花さんがブランコに向かい、オタクたちがそれをゾロゾロ追う光景でクスッときた。

永野さんは最後まで素で応援していた。
スタンドに背中を向けて試合をガン見である。

この日は勝つことが出来なかったが、HRも出るなど翌日を期待できる吉兆がたくさんで、そわそわしながら帰路についた。

2日目。6月ながら天気は快晴。

少しだけ影のあるわぐちゃん。
ハイタッチは、少しだけゆっくり?
気のせいかな。

イーグルスブリッジというアトラクションを楽しむ田中さんと高木さんを真下から見た。
こらみにゃみ、今ガニ股はやめて!

昼間からビールを飲んだ。
クレープを買って出来上がりを待ってたら、隣に田中美海さんがいた。(ビビって無言で飛び退いた。もったいない。)

酒を飲みながら、同好の士と肩を並べながら、推しの子と一緒に試合で一喜一憂しながら、ときには気軽にお話ししながら。
そんな理想郷のような環境でスポーツを観戦できるのが、ワグナイターなのだ。

試合は快勝。
ホームで負け込んでいた2018年のイーグルスが、である。

揃いのホームユニを着て大声を張り上げ、全ての応援歌を歌いこなすわぐなーさん達は、意外にも地元ファンにとても良い印象を持ってもらえたようだ。

ーーこの日だけの応援歌は、極上スマイル。
「いくぞ!勝つぞ!犬鷲!オイ!」
……これ、ライブでコールしちゃダメ?
いつも思ってるんだけど。ーー

WakeUpGirls!が聖地で親しまれ、遥か遠くからファンを集める。
何もなくても仙台に来てくれる方々や、仙台に仕事を見つけて住んでくれた方もいる。
“WUG”という“仙台のアイドル”のコンセプトはここに完全となりつつあるのだ。

私はそのように感じていた。

ろっけん。2018年①

人生有数の無理をして行ったイベントがある。
東北ろっけんソロイベントツアーだ。

上司にも正直にわぐの話を打ち明け、休みたいと頼み込んだ。
お陰で3月の休暇はすべてソロイベントになり、5~6連勤と遠征を繰り返す体力勝負となった。
お金もかかる。
雪道で事故する危険もある。

それでも私は、なるべく全てを見ておきたかった。
実際全ては叶わなかったが、5箇所9公演を回ることができた。

私はWUGに迷いを感じていたし、7人全員なんて追いきれないのは分かりきっている。
だから全てに目を通して、この先の応援相手を見定めようと思ってのことだ。


遠く秋田の地で見たのは、降り積もる雪、綺麗な城下町。美味しいお酒。
田中美海の圧倒的な歌の飽和攻撃、そしてWUG!への愛着。
いまやあちこちで活躍する彼女が、最後に帰る場所だと嬉しそうにWUGを語った。


“あの日付”に郡山で見たのは、黙祷を捧げるまち。
そして吉岡茉祐の歌唱力と構成力。
彼女のソロイベントは、単独のイベントとして頭ひとつ抜けている。
昼と夜の片方参加でも両方でも、どちらでも楽しめる味付けの差分はお見事。
はて、吉岡茉祐のバラードを聴いたことはあるだろうか。
聴いたことないよって人。
もう一段階深く彼女に惚れるよ。


翌週は、いわきの地でイオンコラボによるチャリティーイベントも行われた。
常磐道を走り、黒いビニールの山と“ひとけ”のない山間の村を横目にし、ぞわぞわと身体が強ばった。


海とともに育ち、海に飲まれたまち、石巻
片山実波や『TUNAGO』でも縁のあるこの小さな港町に、永野愛理はささやかな花を咲かせた。
ライブハウスはあまりにも小さく、一度たりとも彼女の姿を見ることが叶わなかったファンもいるだろう。
だが、彼女はそのような一人ひとりすら愛し、声をかけて送り出してくれた。


盛岡に凱旋した奥野香耶は、信じてついてきたファンを手のひらの上で転がし揺さぶり追い詰めて、とことん骨抜きにした。
彼女の故郷のひとつである盛岡は、しかして彼女の舞台装置として使われたのだ。
この公演の衝撃度については、私は「同じ目にあってみな」としか説明することができない。
各自、レポートを漁ってみてほしい。


高木美佑は聖地MACANAを任され、好き!楽しい!やりたい!という彼女の笑顔が詰まった、おもちゃ箱のようなソロイベントでトリを楽しく畳んだ。
MIXグルグルなんでもアリの、アニクラのようなハチャメチャ空間がWUGに存在できるのは、きっと彼女が主役の時だけ。



さて、東北をぐるりと回ったわぐなーたちが最後に行き着いたものこそ、わぐらぶ仙台バスツアーである。

正直、5万って……と思いつつも勢いで参加した。
(秋保グランドホテル貸切、館内放送、チャーターバス、ライブと考えるとやっぱり……)

でも、私は楽しかった。

「陽だまり」といったかな、食堂での夕ご飯。
宮城の地物、お寿司や牛タンのビュッフェだ。
見渡す限りわぐなーさんしかいないという摩訶不思議空間に、見知らぬオタクと腹を抱えて笑った。
同室のオタクが「牛タンうめぇ!マジ日本に生まれて良かった!」と感動していたのが我がことのように嬉しかったし、実はその牛タンを焼いてたのがわぐなーさんだったのも面白かった。


こんな場面もある。
制服姿の可愛らしい売り子さんがご当地サイダーを売っていた。
よく見るとWUGの缶バッジをたくさん装備している。
サイダーを買うとチェキ撮影してもらえるという。
少し気恥ずかしかったが、やってみた。

……人生初チェキ、めちゃめちゃ幸せな顔で写真に写ってしまったよ。

恥ずかしながらあとで知ったことだが、彼女は『あらあらかしこ』という地元の情報番組に出演している、渡辺花さんという超アイドル好きのモデルさんであった。


館内放送をわぐちゃんがジャック。
ケーブルテレビで見るわぐちゃんねるは、感動の高画質(ニコ生さん……)。
カラオケボックスに向かう私達が何故か生で映されたり。
高木美佑さんのクソコール、高木美佑さんの自爆ネタ、高木美佑さんの……こほん。
自由奔放に跳ね回るわぐちゃんたちの空気感は、やはりここにしかないものだと感じた。


二次会もあった。秋保の静かな山奥に、MOGRA店長によるガンガンのアニクラが生まれた。

これは幻のイベント。
多くは語らないし、事前のアナウンスと色々違う内容に不満を覚えた方もいるだろう。
私は幸運にも、これに立ち会うことができた。

(なんであなたたち出てくるのwwwという話。)

東北各地で歌われた幻のソロ曲を全て聴けた。
実質ソロイベ全通。

SEVENTH HAVEN。
この曲がカバーされる機会はこの先絶対に来ない。
心からの自慢だ。


さて、アニクラの後はそのままお風呂タイム。
イベント会場からそのまま風呂へ直行し、そのまま部屋でふかふかの布団に入る。
こんな幸せが他にあるだろうか。
私は知らない。

ーー“汚いTUNAGO”のエピソードは、知らなくていい領域だ。ーー

そのような形で、ツアーの一日目は幕を閉じた。



明くる日。
ねむねむのわぐちゃんたちと行うラジオ体操で一日が始まった。

同室のオタクたちと再会を誓い、再びのバス旅。
バスの車内で見せられたものは、忌々しい5年前の映像。
車が、人間が、家が、街そのものが、波に飲まれる光景だ。
私は何度となく見てきた映像だが、何度見ても語る言葉が見つからない。きっと、何歳になっても。

それを見た後で私達が降り立ったのは閖上の港。

そこに街はなく、土ばかりが盛られている。
だが、閖上には朝市があった。
魚や地物を売る屋台が並び、好きなものを買ってBBQをするというレジャースポットだ。
とっかんの建物しかないが、家族連れで賑わうここには、あの5年前を感じさせない強さを感じた。


そして目玉イベント、WUG5周年ライブ。

今まででいちばんの長丁場。
ぜいたくにも選ばれた500人だけの、最高の空間。
あの場でわぐちゃんたちが見せた光景を、決意の言葉を、私はいまだはっきりと覚えている。

ひと月かけて巡った東北の地を線で結んだら、北斗七星になった。
あたため続けた新曲、Polarisの本当の初披露。

5年目という“WakeUpGirls!”の誕生日をみんなで祝った。
まだまだわぐは続く。
やりたいことはたくさんある。
彼女たちは決意をもってそう語った。

そうだ、私もまだまだ見たいものばかりだ。
そして、まだまだ知らないものを一緒に見せてもらいたい、あげたい。

ソロでお仕事を始める子もじきに出てくるだろう。
だが、彼女たちにはわぐがある。
最後にまた帰って来て、もっと楽しいことを見せてくれるだろう。
そう、思っていたのだ。

『新章』。2017年②

率直に言って、しんどかったというのが感想だ。
期待をしすぎていたのか。

喧嘩や暴言ばかりを目にした。
新曲も少なかった。
キャラクターの内面が、言い訳できないくらい変わってしまった。
物語の屋台骨が、いくつか致命的に折れているように見えた。

ひとりでファンやるのが辛くて、初めてオフ会に参加した。

歴戦のファンの方、新しいファンの方。

色んな方の考えや想いを冗談混じりに聞けて、私はやっとWUGを自分の固定観念と切り離し、相対的に、冷静に見る視点を培うことができたと思う。

印象的なお話がある。

私たちわぐなーは、WUGちゃんの遊び仲間やクラスメートくらいの存在なのだ。
家族じゃあるまいし、例えば産みの親とか育ての親とか、そんなことに首を突っ込んで心配するのは、余計なお世話。
彼女たちは僕らの掌で転がせるおもちゃじゃない。
一緒に楽しく遊ぶこと、それだけが私たちにできる全てのことなのだ、と。

「家族」。「一線越えてる」。
今となってはそんな発言もあるが、私は今でもこの時に聞いた話をひとつの信条としている。

ーー

さて、『新章』の中身にも触れておきたいが。

これについては、申し訳ないがまたの機会に追記という形としたい。

繋ご。2017年①

年が明け、2017年。
仙台駅前のカフェでWUGの情報を漁っていた私は、あるイベントの告知を目にする。

ファンクラブ限定メンバーソロイベント。
しかも限定CDの販売つき。

もとは楽曲寄りのオタクだったので、この情報には飛びあがった。
いままで加入したファンクラブなど楽天イーグルスくらいしか無かったし、アイドルのFCがどんなものか分からなかったが、気にせず加入を決めた。



1月といえばもうひとつ、『青葉の記録』。

『七人のアイドル』を脚本の待田女史が自ら再解釈した、全てのはじまりの記録。

『新章』が決まったこのタイミングでこれを演じてくれたことには、特別な意味を感じざるを得ない。

ひとりの男が作ったWakeUpGirls!を七人の少女たちが担い、みずからの身体と時間を使って“物語”を紡いでいこうという決意に見えた。

『新章』を前に落としてしまったかと思われた“魂”のようなものが、たしかにここにあるんだ。
そんな感慨に浸りながら、私は慣れない東京の地下鉄“ラビリンス”に翻弄されていた。



3月、有明のソロイベント。

私が参加できたのは、山下さん(残念ながら落選)を除く6公演。
当時の推しである永野さんが本命だったが、なんとなく行けるだけ行ってみた。
結果は大正解。

奥野さんの迷いと決意、青山さんの半生、吉岡さんの構成力と詩、高木さんのド派手さと行動力、永野さんの可憐さと格好よさ、田中さんの歌唱力とオタク力。

彼女たちならきっと一人一人でも活躍できるし、全員でならもっと大きなこともできる。
そう確信していた。

4thライブツアーは仙台でしょ、千秋楽は情報出るから行くでしょ、あと大宮も行けるなあ。

たくさん行っちゃうなあ。
そうだ、聖地巡礼もやっとこう。

ーー

きっとこの頃が、ファンとして私がいちばんギラギラしていた時期。

ビジュゥさんや天ぱりさんにも初めて訪れたし、逆に友人と行った思い出の地、サンファンパークがMVに使われるということもあった。

私はWUGの物語の中に飲み込まれ、2.5次元の世界観をたゆたう快感を噛み締めていた。

ーー
ーー

ちなみに、以下蛇足であるが……

これはきっとWakeUpGirls!というコンテンツの一つの特徴といえる仕掛けなのだ。
このコンテンツに関わった人物は、オタクもスタッフもみなWakeUpGirls!の“物語”の一員になる。

現実と時間軸や地理の大半を共有するこの作品は、いわば“もうひとつの世界”。
だが、ライブや聖地巡礼に参加すると、現実と物語が大部分で重なって見え、自分が“あちら側”にいる感覚が芽生える。

私達はいつの間にか“ワグナー”という登場人物になり、WakeUpGirls!と一緒にもっともっと楽しい物語を作りたくなる。

身に覚えはないだろうか?

お客さんとしてライブを見に行ってるのに、我が身のことのようにWUGちゃんを応援する。
こうしたらもっと“エモい”だろうなと思うコールや企画を考え、乗っかる。

お客の“意思”など、普通は形にしようとなど思わないだろう。
TUNAGOを斉唱するのも、ずっと無かった“まゆしぃ”コールを入れるのも、別にしなくてもいいことのはず。

私達は意識することなしに、大田邦良のような“わぐなー”の人格を演じ、互いにコミュニケーションを取り始める。
そこがきっと、このコンテンツ最大のカラクリなのではないだろうか。

ーー

そして、4thライブツアーが幕を開ける。

このツアーには、前年とはまたひと味違う強烈なパワーが感じられた。

『新章』を絶対成功させる。
わぐなーを増やす。
ずっとわぐなーでいてもらう。

そんな強い意思のパワーだ。
彼女たちにも、迷いはあったのだろうと思う。
このツアーで、きっとそれを振り切らんとしたのだ。

プロモーションも強力だった。
宮城や仙台も後押ししてくれて、イーグルスも乗っかって、スタンプラリーや七夕企画も手伝って。

聖地にどんどん人が集まったし、地元の人たちにも着実に親しまれつつあった。

これこそ、WUGが掲げた震災復興のかたち。
東北に「エンターテイメント」を、そして人を呼び込む。
この頃がWUGの“2.5次元”や“ハイパーリンク”を一番強く感じた時期だったのではないだろうか。

『新章』に向けて、わくわくが押さえきれなくなっていた。

「追っかけ」はじめたよ。2016年

WUGの3rdライブは素晴らしかった。

空調が効き、小さめながらよく見える会場。
クオリティの高い生歌。
精緻なフォーメーションダンス。
ゆかいなメンバーたち。

“キャラクターの力”を借りずに、ここまでの魅力が出せる子たちだとは……。

仙台サンプラザでの昼公演が終わった後に友人と約束があった私は、そのままグッズ※をたくさん買って友人宅に持ち込み、いやー良かったのよ!と自慢した。

……あまり興味を持ってくれなかったが、それでも前のめりにガツガツ語った程度に私はのめり込んでいたのだ。



(※服系以外は普通にその時間でも買えた。それもアイマスとの一つのカルチャーショックである)

ーー

私がそれまで見てきた「キャラクターのライブ」とWUGのライブは、少しだけ違うと思う。

「キャラクターのライブ」は声優をイタコのようにキャラクターの“化身”に見立て、重ねて見るもの。
声優……つまりある種の役者として舞台に立ち、キャラクターのステージを演じるものだ。

対するWUGのライブは、7人の少女たちが“キャラクター”を演じる時間を設けていない。
彼女たちこそがアイドル“WakeUpGirls!”そのものであり、殊更アニメキャラクターを演じなくてもアニメとリアルは自然と“重なって”見えるからだろう。

ーー

やがて東京千秋楽の日、情報を眺めていると……

東北イオンコラボ。
三幸製菓コラボ。
アニメタイアップ。

本当にびっくりした。
え、WUGってそんなことやるの!?

ーー例えば、以前からあったイーグルスコラボは地元の人間ならさほど驚かないはずだ。
あの球団は地元の面白いネタを見つける嗅覚が鋭い。ーー

だが、誰もが利用する有名企業(の東北支社)とのコラボは度肝を抜かれたし、名目上はアニメ中の存在であるWUGが、まさか他アニメに音楽を提供するとは思わなかった。

今にしても、この時ほどWUGにびっくりしたことはこの先何年もない。
もっとも、何故この時それほど驚いたかという点には、WUGはこんなもんだ、B級だ、という侮りやバイアスが根底にあったことは事実であるが……。



さて、次のライブは幕張メッセか。

年末のフェスって長いのかな……?
連休とれないし日帰りしかないか。
終電なくなるんじゃないの?

……でも行く。
じゃ、車だ。

(この頃にはご覧の有り様で、もう関東くらいなら後先気にせず遠征するようになっている。)

SUPERLIVE。

『新章』が予告された衝撃の公演。

正直イベントホールの音割れは酷いし、演者さんは見えないし、思ったよりぜんぜん短くて、満足ばかりのライブではなかったが……

それでも、あのライブに参加したことで、私はさらにWUGが好きになっていた。
なぜなら。

『WUGpedia』をご存知だろうか。
少しばかり古い『WUG』の資料集だ。

とても貴重なインタビューや解説、細やかな設定など、『WUG』TVシリーズまでの全てが掲載された網羅的な資料なのだが、この書籍にはある印象的な文言が書かれている。

“「2期決定」以外のことはだいたい書いてあります。”

そう、誰もがTVアニメの続編だけは絶対にないと思ってしまっていた。

だからこそ、『新章』決定に対する想いや期待というのはひとしおで。
彼女たちが少しだけ報われた気がして。
アニメに見劣りしない、現実としてそこにある“物語”を噛み締めて、私は帰路につくのだった。

「わぐなー」になる。2015年

私事ながら、大学を出た年。
その頃の私は「ロコ」というキャラクターに惚れ込み、アイドルマスターシリーズに傾倒していた。

ーー

就職したものの、仕事がうまくいかない。
先輩の当たりが日に日にキツくなる。

そんな鬱屈とした年でも楽しみは見つかるものだ。

友人が西武ドームで行われるアイドルマスターの10周年ライブのチケットを引き当て、私を誘ってくれたのだ。

有給など使えなかったが、たまたま直前に研修が入り、代休が取れた。
納車2ヶ月の慣れないマイカーで、遠く関東の山奥までドライブした。
「声優のライブ」なんて誰が行くんだ?と思っていたが、その時間は底抜けに楽しかった。

ぐったり、うっとりしながら仙台に帰った私は、すぐに次のライブを探し始める。

私はすっかり「ライブ」に魅了されていた。

ーー

これと並行して、私がよく耳にしていたのがWUGだ。
曲は好きだったから、なんとなくベストを買った。(握手会はスルー)
野球場でのイベントに遭遇し、彼女たちの姿を初めて認知した。

そして、思わずグッズを買った。
夏夜と実波の応援バット。
ここらが初めてWUGにお金を使った瞬間だ。

わぐずーを見た、わぐばんも見た。
タレントさんみたいなことやってるなと思った。
知ってる試合と、告白のシーンが映ったりもした。

七人のアイドルが無料配信されており、思いがけず原点に触れることもできた。



そして、気がつくと私はなんとなしに青春の影を見ようと映画館を探し、フォーラム仙台に行き着く。

(なにこれ、めちゃめちゃ良いじゃん!)

青春の影は『七人』や『TVシリーズ』よりも深く、じっくりと心理描写に尺が割かれていて、人物の魅力を存分に感じられる作品だった。

ーー『WakeUpGirls!』はストーリーこそ荒削りなものの、生ぐさくも魅力的な背景や思考を持つ“人間たち”がせめぎ合う群像劇として見るべき作品だと私は思っている。ーー

モヤモヤばかりが溜まって、何もうまくいかなくて、突破口が見つからなくて、でも何かはし続けなくちゃいけない。
故郷を空ける不安を抱き、大人たちの思惑に振り回されながらも、やがて自分たちを見つけていく。

そんな彼女たちを見て、私はすっかりこの作品に心を奪われていたのだろう。



果てに、続編『Beyond the Bottom』。
PVから聞こえてきた主題歌はゾクゾクがとまらなかった。
大急ぎながら、ばら蒔いた伏線をすべて意味ある形で片付け、WUGのストーリーをしっかりと区切りへ落とし込む構成は爽快で……

気持ちいい!
見てきて良かった!!

そんな底抜けの満足感とともに映画館を後にしたことを、今でも鮮明に覚えている。
これを“今まで見てきてくれたファンだけのために作った”なんてもったいないよ、ゆたかさん。ね?

ーー

さて、そんな経緯があって、私は次のライブのめどを付けた。

ミリマス3rd仙台。
あとそれが終わったら、WUG一回行ってみるかあ。

……なんと!WUGのチケットは抽選で積まなくても買えるんだ。
仙台で公演あるし、行って適当に見てこようっと。

アイマスほどじゃないけど、曲は良いし。」

これが、2015年の私の内面だったと思う。