回顧録。七つの星に変わる。

“忘れることが怖いから 少しずつ話をしよう”

繋ご。2017年①

年が明け、2017年。
仙台駅前のカフェでWUGの情報を漁っていた私は、あるイベントの告知を目にする。

ファンクラブ限定メンバーソロイベント。
しかも限定CDの販売つき。

もとは楽曲寄りのオタクだったので、この情報には飛びあがった。
いままで加入したファンクラブなど楽天イーグルスくらいしか無かったし、アイドルのFCがどんなものか分からなかったが、気にせず加入を決めた。



1月といえばもうひとつ、『青葉の記録』。

『七人のアイドル』を脚本の待田女史が自ら再解釈した、全てのはじまりの記録。

『新章』が決まったこのタイミングでこれを演じてくれたことには、特別な意味を感じざるを得ない。

ひとりの男が作ったWakeUpGirls!を七人の少女たちが担い、みずからの身体と時間を使って“物語”を紡いでいこうという決意に見えた。

『新章』を前に落としてしまったかと思われた“魂”のようなものが、たしかにここにあるんだ。
そんな感慨に浸りながら、私は慣れない東京の地下鉄“ラビリンス”に翻弄されていた。



3月、有明のソロイベント。

私が参加できたのは、山下さん(残念ながら落選)を除く6公演。
当時の推しである永野さんが本命だったが、なんとなく行けるだけ行ってみた。
結果は大正解。

奥野さんの迷いと決意、青山さんの半生、吉岡さんの構成力と詩、高木さんのド派手さと行動力、永野さんの可憐さと格好よさ、田中さんの歌唱力とオタク力。

彼女たちならきっと一人一人でも活躍できるし、全員でならもっと大きなこともできる。
そう確信していた。

4thライブツアーは仙台でしょ、千秋楽は情報出るから行くでしょ、あと大宮も行けるなあ。

たくさん行っちゃうなあ。
そうだ、聖地巡礼もやっとこう。

ーー

きっとこの頃が、ファンとして私がいちばんギラギラしていた時期。

ビジュゥさんや天ぱりさんにも初めて訪れたし、逆に友人と行った思い出の地、サンファンパークがMVに使われるということもあった。

私はWUGの物語の中に飲み込まれ、2.5次元の世界観をたゆたう快感を噛み締めていた。

ーー
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ちなみに、以下蛇足であるが……

これはきっとWakeUpGirls!というコンテンツの一つの特徴といえる仕掛けなのだ。
このコンテンツに関わった人物は、オタクもスタッフもみなWakeUpGirls!の“物語”の一員になる。

現実と時間軸や地理の大半を共有するこの作品は、いわば“もうひとつの世界”。
だが、ライブや聖地巡礼に参加すると、現実と物語が大部分で重なって見え、自分が“あちら側”にいる感覚が芽生える。

私達はいつの間にか“ワグナー”という登場人物になり、WakeUpGirls!と一緒にもっともっと楽しい物語を作りたくなる。

身に覚えはないだろうか?

お客さんとしてライブを見に行ってるのに、我が身のことのようにWUGちゃんを応援する。
こうしたらもっと“エモい”だろうなと思うコールや企画を考え、乗っかる。

お客の“意思”など、普通は形にしようとなど思わないだろう。
TUNAGOを斉唱するのも、ずっと無かった“まゆしぃ”コールを入れるのも、別にしなくてもいいことのはず。

私達は意識することなしに、大田邦良のような“わぐなー”の人格を演じ、互いにコミュニケーションを取り始める。
そこがきっと、このコンテンツ最大のカラクリなのではないだろうか。

ーー

そして、4thライブツアーが幕を開ける。

このツアーには、前年とはまたひと味違う強烈なパワーが感じられた。

『新章』を絶対成功させる。
わぐなーを増やす。
ずっとわぐなーでいてもらう。

そんな強い意思のパワーだ。
彼女たちにも、迷いはあったのだろうと思う。
このツアーで、きっとそれを振り切らんとしたのだ。

プロモーションも強力だった。
宮城や仙台も後押ししてくれて、イーグルスも乗っかって、スタンプラリーや七夕企画も手伝って。

聖地にどんどん人が集まったし、地元の人たちにも着実に親しまれつつあった。

これこそ、WUGが掲げた震災復興のかたち。
東北に「エンターテイメント」を、そして人を呼び込む。
この頃がWUGの“2.5次元”や“ハイパーリンク”を一番強く感じた時期だったのではないだろうか。

『新章』に向けて、わくわくが押さえきれなくなっていた。